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和歌山地方裁判所田辺支部 昭和39年(ワ)130号 判決 1966年12月05日

和歌山県日高郡南部町大字北道

原告 丸山敏夫

右法定代理人親権者母 丸山智恵

同所

原告 丸山智恵

右両名訴訟代理人弁護士 梅本健男

田辺市上屋敷町九四番地

被告 中田栄三郎

和歌山県日高郡南部町大字南道五四番地

被告 寺本繁弘

右両名訴訟代理人弁護士 一木正光

主文

被告中田栄三郎は、

原告丸山敏夫に対し金一、六三一、〇〇〇円及びこれに対する昭和三九年一〇月五日より、

原告丸山智恵に対し金五、〇〇二、四四〇円及び内金三、四六二、〇〇〇円に対する昭和三九年一〇月五日より、

内金一、五四〇、四四〇円に対する昭和四一年八月二日より、

各完済まで各年五分の割合による金員の支払をせよ。

原告等のその余の請求を棄却する。

訴訟費用中、原告等と被告中田栄三郎との間に生じた分は同被告の負担とし、

原告等と被告寺本繁弘との間に生じた分は原告等の負担とする。

この判決は原告等勝訴の部分に限り、原告丸山敏夫において金三〇万円、原告丸山智恵において金一〇〇万円の担保を供するときは、仮りに執行することができる。

事実

原告等訴訟代理人は、「被告等は連帯して、原告丸山敏夫に対し金一九一万円及びこれに対する本訴状送達の日の翌日より、原告丸山智恵に対し金六、一六〇、四四〇円及び内金四六二万円に対する本訴状送達の日の翌日より、内金一、五四〇、四四〇円に対する原告等提出の昭和四一年八月一日付「請求の趣旨原因拡張の申立書」送達の日の翌日より各完済まで各年五分の割合による金員の支払をせよ。訴訟費用は被告等の連帯負担とする。」との判決及び仮執行の宣言を求め、その請求の原因としてつぎのとおり述べた。

一、(一)、訴外丸山末男はその妻である原告智恵との間に長女文子(昭和二二年九月四日生)と長男の原告敏夫(昭和二五年六月一〇日生)の二子をもうけたが、昭和三八年三月九日死亡し、爾来原告智恵は右二子を養育し来ったものである。

(二)、訴外東亜燃料工業株式会社(以下東亜燃料という)はプロパンガス燃料を製造し、訴外岩谷産業株式会社(以下岩谷産業という)は右燃料の販売代理店であり、被告中田は岩谷産業の下にある燃料中卸店であり、被告寺本は同小売店である。

二、被告中田は右ガスを容器に充填してこれを被告寺本に卸売し、被告寺本はこれを消費者に持参販売し、容器はかねて消費者が買受けて使用しているものと交換する仕組であった。

三、昭和三八年八月三日頃、被告寺本はかねて被告中田の充填したガス容器一本を原告等方に持参し、消費済みの空の容器と交換し、新容器入りのガスを売渡した。

四、同年同月七日午后三時三〇分頃、前記文子は和歌山県日高郡南部川村大字谷口四一七番地原告等自宅において、右新容器入りのガスを使用し鍋に鶏卵を入れて茹で終り、容器の元栓を閉めようとしたが閉まらないので二回反対に廻して閉めようとしたところ、右元栓の根もとにあるグランドナット(シメナットともいう)が反対に弛んでいたためにガスが洩れていたことにより、突然ガスが爆発し、ために同女は全身に火傷を負い、よって、同日午后一一時五分、田辺市湊五一〇番地紀南綜合病院において死亡するに至り、原告等は后記の如き損害を蒙った。

五、右事故の発生は被告等の過失に基くものである。

即ち、右容器のグランドナットの外側ネジは緊締せられず浮上ったままの状態であったため、通常ハンドルの下面とグランドナットの上面とに存すべきネジ山二山程度の隙間が余りなかった。加うるに、グランドナットの内側ネジ即ちスピンドルの外側ネジとグランドナットの外側ネジとの関係はいわゆる逆ネジになっている。従って、スピンドルを閉の方向に廻してゆくと、ハンドルの下面はグランドナットの上面に接触摩擦し、グランドナットの外側ネジはもどけて来て、これがため、ガスが上部に噴出するに至ったのである。

被告中田はガスの充填に際し、容器に不完全な個所が存しないか否かを充分確かめた上これを被告寺本に交付すべき業務上の注意義務があり、また被告寺本も容器を原告等方に交付するに際し同様不完全な個所がないか否かを点検すべき業務上の注意義務があるのに、被告両名とも右業務上の注意義務を怠ったため前記の如く右外側ネジが弛んでいたのにこれに気付かず被告寺本が漫然前記容器を原告等方に持参使用せしめたため前記の如き事故が発生するに至ったものである。

以上の如く、被告等の過失が競合して本件事故を発生せしめたものであるから、被告等は原告に対し、よって生じた損害を賠償すべき義務がある。

六、本件事故により、原告等が蒙った損害は左のとおりである。

(一)、右事故により、原告等方居宅である木造瓦葺二階建居宅一棟建坪二四坪七合五勺、二階坪二四坪七合五勺及び納屋、物置、隠居部屋、便所等の建物一切並びに屋内にあった家財、衣類、農業用機械器具類一切が焼失するに至ったが、これ等はもと亡丸山末男の所有であったところ、前記の如く同人は昭和三八年三月九日に死亡したので相続によりその妻たる原告智恵、子たる原告敏夫及び文子において各三分の一の相続分を取得したものであるが、更に文子の死亡により、同人の損害賠償請求権は母たる原告智恵が相続するに至った。よって、結局、右各物件の損害賠償請求権は原告智恵において三分の二、原告敏夫において三分の一の割合でこれをそれぞれ有することとなる。

ところで、右建物の事故当時の価額は合計金三二三万円、家財等の動産の価額は合計金一〇〇万円総計金四二三万円であるから、原告智恵はその三分の二にあたる金二八二万円、原告敏夫は三分の一にあたる金一四一万円の損害賠償請求権を有するわけである。

(二)、つぎに、文子は右事故により死亡したため左の如き得べかりし利益を喪失した。即ち、死亡当時文子は満一五才であったが、満一八才で就職すれば少くとも一月金一万二千円程度の収入があり、生活費等をその二分の一とし、四五年間稼働するものとすれば就労可能年数に対応する係数は二三・二三一であり(これは年五分の年毎に行う利息控除の方法によるホフマン式計算により算出したものである)、従って、その受取るべき現価は金一、五四〇、四四〇円となり、これが文子の得べかりし利益の喪失額である。

そして、この損害賠償請求権は原告智恵において相続により取得したものである。

(三)、更に、文子は死亡当時南部高等学校普通科一年生であり、順調に進めば学校卒業后相当の収入を取得できる将来有為の子女であった。しかして、原告等はこのように有為な文子を失い、かつ、建物、家財一切を失ったため痛く落胆し、精神上甚大な苦痛を蒙った。よって、慰藉料として、原告智恵は金一八〇万円、原告敏夫は金五〇万円を請求する。

七、以上の次第で、原告智恵としては前記建物、家財等の損害金二八二万円、得べかりし利益の喪失による損害金一、五四〇、四四〇円、慰藉料金一八〇万円合計金六、一六〇、四四〇円及び建物、家財等の損害額及び慰藉料合計金四六二万円に対する本訴状送達の日の翌日より、利益喪失による損害額については本訴提起后昭和四一年八月一日付「請求の趣旨原因拡張の申立書」をもってはじめて請求したので、右書面送達の日の翌日より、各完済まで各民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払を求め、原告敏夫は前記建物、家財等の損害金一四一万円、慰藉料金五〇万円合計金一九一万円及びこれに対する本訴状送達の日の翌日より完済まで前同様年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。

被告等訴訟代理人は、「原告等の請求を棄却する。訴訟費用は原告等の負担とする。」との判決を求め、答弁及び主張として、

一、請求原因一、(一)の事実は不知。一、(二)の事実は認める。

二、同二、の事実は認める。ただし、ガスの容器については、消費者が予めこれを買受けている場合と貸付を受けている場合とあり、前者の場合は使用済の容器と新しい容器とを交換し、後者の場合は使用済の容器を引取り、新たな容器を貸付けるのである。

三、同三、の事実は認める。

四、同四、の事実中、原告等主張の日時場所でプロパンガスの爆然事故があったこと、右事故により丸山文子が死亡したことは認めるが、それが、ガスの容器の元栓の根もとにあるグランドナットが弛んでいたためにガスが洩れていたことに基因するとの点は否認する。その余の事実は不知。

五、同五、の事実は否認する。本件爆発事故は、文子がガス容器の開閉操作を誤ったためにガスが洩れこれに引火したために生じたもので、原告等主張の如き容器の構造上のかしに基くものではない。即ち、被告等はガス使用の際は都市ガスと同じく、ガス器具の開閉栓(コック)を開閉して使用するように指導していたにもかかわらず、文子はガス容器の元栓を一一開閉して使用することを反復し、コックを閉めていなかったために、元栓開栓と同時にガスが洩れ、このガスに引火して爆発が生じたものである。

六、同六、の事実中、損害額の点は否認する。その余の事実はすべて不知。

七、同七、の主張は争うと述べた。

証拠≪省略≫

理由

一、東亜燃料がプロパンガスを製造し、岩谷産業は東亜燃料の販売代理店として中卸店被告中田に右ガスを卸売りし、同被告は小売店被告寺本に対し右ガスを卸売りし、同被告は消費者に右ガスを小売りしていたこと、被告中田は右の如き販売ルートによって入手したプロパンガスを容器に充填し、被告寺本は被告中田より右容器一本を買受けて昭和三八年八月三日頃和歌山県日高郡南部川村大字谷口四一七番地原告等方に持参して売渡したこと、同月七日午后三時三〇分頃、同所において右プロパンガスの爆発事故があり、訴外丸山文子が死亡したことは当事者間に争いがない。

二、そこで、本件事故の発生原因について考察することとする。

≪証拠省略≫を総合すれば、訴外丸山文子は右事故発生の日時頃、原告等方自宅で右ガスを使用し、鍋に鶏卵を入れて茹で終り、ガス器具のコックを閉めず火がついたままの状態でガス容器の元栓のハンドルを閉めて火を消そうとし、これを閉の方向に廻したけれどもよく閉まらないため、更に、力をこめてハンドルを同方向に廻し続けたところ、グランドナットがスピンドルに付着して連動し、グランドナットが外れる程度にまで緩んだためプロパンガスが噴出し、ガス器具の焔から引火して瞬間的に爆発を惹起したものであることが認められ、右認定を左右するに足る証拠はない。

しかして、≪証拠省略≫を総合すれば、本件ガス容器のバルブ本体に付いているグランドナットの締めつけは通常の場合に比してかなり緩んでいたこと、バルブの元栓のハンドルの裏面とグランドナットの頭表面との間にはネジ山二山半位(三ミリないし四ミリ位)の間隔の存するのが普通であるのに、本件バルブにおいてはスピンドルとバルブシートとのかみ合わせが悪く、また、バルブシートの下にあるシートパッキン、その上にあるOリング、更にその上にスラストパッキンの機能が悪化していたため、ハンドルを閉の方向に廻転するとハンドルの裏面とグランドナットの頭表面とが間隔を残さないで直接接触し、グランドナットに圧力が加わること、更に、グランドナットとスピンドルとは逆ネジになっているのでグランドナットのしめつけが固定していないとハンドルを閉めるときにグランドナットがスピンドルに付着して廻転しグランドナットが更に緩むようになること、以上の構造上のかしが重なり合い、ハンドルを閉の方向に強く閉め続けると、遂にグランドナットがスピンドルに付着したまま抜け落ちる危険の存していたことが認められ、右認定を左右するに足る証拠はない。

前記各認定事実を総合して考察すると、結局、文子はプロパンガスの使用を終り、ハンドルを閉の方向に廻転したところ、ハンドルの裏面とグランドナットの頭表面とが接触するに至ったが、完全にしまらないため、ガスの漏洩をおそれ、更に強く同方向にハンドルを廻したためグランドナットに圧力が加わり、締め付けの緩んでいたグランドナットがスピンドルに付着して抜ける方向に廻転し始めたため、遂にガスの噴出力と相俟ってグランドナットが抜け落ちるに至ったものというべきである。

この点につき、被告等は本件爆発事故は、ガス容器の構造上のかしに基くのではなく、文子が被告等の指示に反し、ガス使用にあたり一一ハンドルを開閉して使用を反復し、ガス器具のコックを開閉して使用しなかったためにハンドルを開の方向に廻すと同時にガスが洩れ、これに引火して爆発したものであると主張し、原告智恵の本人尋問の結果によれば、原告等方ではガス使用の際には、まず、ハンドルを開の方向に廻してからコックを開けて点火し、使用を終った時には、まず、ハンドルを閉の方向に廻して閉め、しかる后にコックを閉めるという順序で操作してを消していたことが認められるところ、このような操作によってプロパンガスを使用したとしても、それだけではガスが洩れて爆発事故が発生する危険性があると言い得ないことは≪証拠省略≫によって認められるから、文子の右のような操作方法が本件爆発事故の原因となったものということはできず、その他本件全証拠によっても文子に操作上の過失があったことを認めることはできない。

三、そこで、すすんで、本件事故に対する被告等の責任について考察する。

前記の如く、本件ガス容器は被告中田においてガスを充填し、同被告が被告寺本にこれを卸売りしたものであるが、およそ、プロパンガスのような危険物の販売に従事する者はその爆発の危険を未然に防止すべき業務上の注意義務を負うことはいうまでもない。殊に、ガス容器にガスを充填して販売する者は、その充填に先立ちガス容器の全体に亘って構造上のかしの有無につき点検すべく、反復使用されるハンドル、スピンドル、グランドナットの状態については細心の注意を払い、グランドナットの緩みが認められないかどうか、ハンドルとグランドナットとの間隔が正常であるかどうか、ハンドルの開閉にあたり、グランドナットに異常な圧力が加わり、グランドナットが抜け落ちるような危険性がないか否かについて十分な点検をなすべき義務があるものと言わなければならず、被告中田は右注意義務を果したならば、前記の如き本件ガス容器のかしを発見し得たものというべきである。しかるに、被告中田の本人尋問の結果によれば、被告中田は本件ガス容器にガスを充填するに先立ち、前記の如き注意義務を果さず、ただ、充填后わずかにガス洩れのないことを確認したのみで、ガス容器には何等のかしも存しないと軽信し、これを被告寺本に売渡したものであることが認められるから、被告中田はガス容器に存した前記の如きかしに基いて発生した本件事故についてその責任を負うべきものと言わなければならない(ガス充填后にガス洩れがなかったというだけでは、直ちにガス容器に何等のかしも存しないと速断することはできない)。

つぎに、被告寺本は被告中田よりその充填した本件ガス容器の卸売を受け、これを原告等方に小売したものであるが、このような小売業者に前同様のガス容器を点検すべき業務上の注意義務を要求することは、ガス爆発の危険性を伴うことから考えて適切でない。即ち、被告寺本としてはガス容器を原告等方に据付けるに際し、爆発の危険を伴わない程度の範囲内で能う限りの注意を払うべきであり、しかるときは、ハンドルの開閉に支障がないか、ハンドルの開閉に伴いグランドナットが動くようなことがないか、ガス洩れがないか等の点検をなすべき義務があるに止まるものというべく、被告寺本と原告智恵の各本人尋問の結果とによれば、被告寺本としては右程度の注意義務を履行していたことが認められるのみならず、ガス容器の据付けにあたってはガス容器に異常のあるときは直ちに連絡して貰いたい旨指導していたことが認められるから、以上の事実に徴すれば、被告寺本に対してはいまだもって本件事故につき責任を問うことはできないものというべきである。

四、そこで、本件事故によって原告等が蒙った損害について考察する。

(1)、本件事故により原告等主張の原告等方の建物及び屋内にあった家財等の動産が焼失したことは原告智恵の本人尋問の結果によって認められるが、その焼失当時における価額は建物につき金二九九万三千円(住宅一〇九万円、風呂便所六万円、納屋五六万円、隠居部屋四一万六千円、物置七九万七千円、別棟物置七万円)、家財等は少くとも合計金一〇〇万円総計金三九九万三千円であることは≪証拠省略≫(以上の各証拠のいずれも一部)を検討してこれを認めることができる。

ところで、右建物及び家財等はもと訴外亡丸山末男の所有であったところ、同人は昭和三八年三月九日死亡したので、その妻たる原告智恵、子たる原告敏夫、及び文子において各三分の一の相続分を取得したものであることは≪証拠省略≫によって認められるところ、右文子の死亡により母親たる原告智恵はその損害賠償債権を相続したから、結局同原告は前記損害賠償債権の三分の二である金二六六万二千円、原告敏夫は同じく三分の一である金一三三万一千円の各債権を有することとなる。

(2)、つぎに文子は死亡当時満一五才で、和歌山県立南部高等学校一年に在学中であり、同校卒業后は就職予定であったことは≪証拠省略≫によって認められるところ、文子が高校卒業后満一八才で就職したならば少くとも一月金一万二千円を下らない程度の収入のあることは当裁判所に顕著なところであり(労働大臣官房労働統計調査部―昭和三九年賃金構造基本統計調査報告一巻参照)、また、本件に顕われた諸般の事情から考えて、文子の生活費は右収入の半額が相当と認められるから、年間金七万二千円の純収益があることとなり、満六〇才まで稼働できるものとして、四二年間で純収益合計金三〇二万四千円となるが、今一時にその支払を受けるものとして民法所定年五分の割合による中間利息をホフマン式計算法(複式)により控除すれば残額一六〇五、〇九六円となり、少くとも原告等が主張する得べかりし利益の喪失額一、五四〇、四四〇円以上であることを認めることができ、従って、文子の母たる原告智恵が相続により同額の損害賠償債権を有することとなる。

(3)、最后に慰藉料の額につき考えるに、文子は死亡当時前記の如く高校に在学し、学業優秀にして前途有為の子女であり、原告智恵としては夫亡きあと文子及び原告敏夫の成長に唯一の希望をかけて生活して来たものであり、原告敏夫においても唯一人の姉弟として文子を頼りにしていたものであるところ、同女の急死に遭い、かつ、前記の如く生活の本拠たる居宅及び家財道具一切を失ったため、原告両名は極度に落胆し、精神上甚大な苦痛を蒙ったことは≪証拠省略≫によって認められ、以上の事実に本件に顕われた諸般の事情を考慮するときは慰藉料の額は原告智恵につき金八〇万円、原告敏夫につき金三〇万円をもって相当と認める。

五、以上の次第で、被告中田は本件事故による損害として原告智恵に対し、合計金五〇〇万二、四四〇円及びその内原告等が本訴状によって請求した建物、家財等についての損害額及び慰藉料額合計金三四六万二千円に対する本訴状送達の日の翌日であることの記録上明らかな昭和三九年一〇月五日より完済まで民法所定年五分の割合による遅延損害金、原告等提出の昭和四一年八月一日付「請求の趣旨原因拡張申立書」に基いて請求した得べかりし利益の喪失額金一、五四〇、四四〇円に対する右申立書による意思表示が被告中田に到達した日即ち右書面の陳述のなされた日である同年八月一日の本件口頭弁論期日の翌日たる同月二日より完済まで前同様の遅延損害金を支払うべき義務があり、原告敏夫に対し、合計金一六三万一千円及びこれに対する本訴状送達の日の翌日たる昭和三九年一〇月五日より完済まで前同様の遅延損害金を支払うべき義務があるから、原告等の本訴請求は右の限度で正当として認容すべきも、その余は失当として棄却を免れない。

よって、民訴八九条、九三条一項本文、一九六条を適用し、主文のとおり判決する。

(裁判官 太田昭雄)

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